ヘラブナとはこうして生まれた

始めに断っておきます。ここに書いてある事に生物学的な根拠はありません。

しかし、現在のヘラブナの習性を考えると「こんな感じ」で、琵琶湖の固有種としてゲンゴロウブナ(ヘラブナ)という種類が生まれて来たのではないのかなぁ、と妄想しています。

体高が高く可愛い顔をしているのがヘラブナです。残念ながら、琵琶湖のフナではありません

また、他にも説はありますがヘラブナをゲンゴロウブナから養殖用に品種改良したモノと考えて扱っています。

いろいろな文章でヘラブナはゲームフイッシュとして、品種改良されたという説明を散見しますが、これは間違いです。

もともとは、貴重なタンパク源として期待された魚です。マブナに比べ成長が早く、姿がタイと似て立派な事で、戦中や戦後しばらくの間は「ご馳走」といわれるほど食用とされました。

明治、大正、昭和の戦後しばらくの間は、現在では考えられないほどタンパク源となる食料が無い時代でした。「欠食児童」(お昼のお弁当を持って学校に来られない子どもたちのこと)という言葉もありました。

終戦になり、復員船に乗って外地からようやく神戸港に帰って来た人たちにお弁当が配られました。

お弁当を貰った小さな子どもたちが「あ、お赤飯だ」と喜びましたが、実際は白米ではなく、稗(ひえ)飯だったといった話が伝わっています。

もう日本国内には、白米は欠乏して多くの復員者に配る事は出来ませんでした。

魚をただ釣って楽しむなどという、贅沢な遊びはほとんどする余裕がなかったのです。

「水郷の帝王」とも呼ばれた、ヘラブナ釣りの名人・土肥 伸もヘラブナを食用として売って生活していたりしました。(これに付いては、別ページの「70年前のヘラブナ釣りはウドン」 の土肥 伸さんの書いたヘラブナを栄養補給で食べる事を前提にして書かれている「序」の文章をご覧ください)

今でも、鮒鮨の原料である二ゴロブナの減少によって、代替品としてヘラブナが鮒鮨にされることも多くあります。

千葉県・佐原地方でスズメ焼きと呼ばれる小さな鮒などの小魚を甘露煮にして何匹かを串刺しにしたものにもよくヘラブナの稚魚が混じっています。

スズメ焼きを食べずに、舐めるようにして上のタレの部分を剥いでみると明らかにヘラブナとわかるフナが多く使われています。

ヘラブナが「ゲームフイッシュ」と呼ばれる大きな原因は他のところにあります。それはまた別の時に。。。。。

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琵琶湖に住んでいた鮒君達

現在から400万年〜600万年ほど前に琵琶湖が形成されました。

その琵琶湖にいつの頃からか、今日「フナ」と呼ばれる魚が住むようになりました。

琵琶湖はそれほどフナ君達の食料となる動物性プランクトンや水中に住むイトミミズなども豊富な湖ではありませんでした。

今では、そこそこ栄養分のある湖として扱われていますが、しばらく前までは栄養分の貧しい湖でした。

ですから、そこに住むフナ君達はいつもお腹を空かせて、ご飯となるエサの取り合いをしていました。

気の弱いフナ

ある日の事です。気の弱いフナ君が久しぶりにご馳走のイトミミズを見つけました。

気の弱いフナ君は「わー、ご馳走だー」と喜んで食べようとしましたが、そこに気の強いフナ君が現れ「邪魔だ、邪魔だ。どけどけー。そのイトミミズはオレ様のご飯だぞー」と、気の弱いフナ君が食べようとしたご馳走を奪っていきました。

また、時々は湖の地面に食べられそうなミミズや昆虫の幼虫が落ちていることもありました。

気の弱いフナ君が、そういうご馳走を見つけてもいつも気の強いフナ君が来て「どけどけー。オレ様のご飯だぞー」と言って取っていってしまいます。

動物性プランクトンがたくさん漂っているエリアや湖底近くには、いつも気の強いフナ君達がウロウロしていました。

そのうちに、気の強いフナ君は気の弱いフナ君達に言いました。

ここは俺たちの縄張りだから、お前達は他のところへ行けー。

ヘラブナ君達の故郷、琵琶湖です。本湖は海のように大きな波があり、普通のウキでは役に立ちません

気の弱いフナ君達は、しかたなくご飯のある岸辺に近いところを離れて少し遠くに集まって暮らすことにしました。みんなでいると安心できるので、気の弱いフナ君達はいつも集団で泳いでいます。

そこに行ってみると、美味しいイトミミズや水生昆虫の幼虫やそれほど美味しいくないけど、時々はお腹がいっぱいになるほど食べられる動物性プランクトンもほとんどいませんでした。

食べられそうな物といえば、不味そうで栄養もあまりない植物性プランクトンがその日のお天気によって、ちょうどいい深さのところを漂っているだけでした。

あんまりお腹が空いたので、気の弱いフナ君達の1人が、おそるおそる植物性プランクトンを口に入れてみました。

不味いです。まるで味がしません。それでもお腹を空かせた気の弱いフナ君達は、いつのまにか植物性プランクトンでお腹いっぱいにすることを覚えていきました。

ここなら、あの乱暴で気の強いフナ君達にいじめられる心配もありませんでした。

それに植物性プランクトンは、大量に発生して食べても食べても無くならないほどたくさんありました。

ただ植物性プランクトンは、その日のお天気によって漂っている深さが違うので気の弱いフナ君達も植物性プランクトンの泳いでいる深さに合わせて泳ぐようになりました。

昔は底に落ちているご飯を探そうと、地底近くを、下の方ばかり見て泳いでいたのですが、植物性プランクトンを食べるようになってからは逆に水面の方を見ながら底よりずいぶん上の方を泳ぐ事が多くなって来ました。

ただ、もともとが気の弱いフナ君達なので、水面にサーっと鳥の飛ぶ影が映ったり、何か聞いた事のないような音がすると慌てて他のところに逃げたり、深く潜ったりしました。

だんだん変わっていく気の弱いフナ君達

気の弱いフナ君達も、4月から5月ごろには結婚シーズンです。この時ばかりは岸辺に接岸して、葦や水草にたくさんの卵を産みつけました。

こうして生まれた子ども達もやはり気が弱く、同じように植物性プランクトンを食べて大きくなっていきました。

何代か代を重ねているうちに、1匹の気の弱いフナ君が他の気の弱いフナ君に言いました。

「なんかお前、ずいぶんお腹が出てるな。ダイエットした方がいいんじゃないか」と、そうするとそのフナも「何言ってるだい、お前のお腹だってすごいぞ。それに、口がなんか下の方が伸びてタラコ唇になってるぞ」。

植物性プランクトンばかり食べてる気の弱いフナ君達はいつの間にか、草ばかり食べる牛や馬のように消化のための腸が長くなり、その腸をしまうためにお腹が出て、背中の方も高くなってきてしまったのです。ヘラブナ君達の腸の長さは他のフナの何倍もあります。

それに、上ばかり見て下からすくうようにしてご飯を食べるんで、下唇が伸びてタラコ唇のようになって来ました。

外側からは見えませんが、鰓耙(さいは)と呼ばれるエラの内側に付いている、水を濾すザルのような役割をする部分も増えていて、一度にたくさんの植物性プランクトンを食べられるようになっていました。

目つきもなんとなく吊り目からまん丸になり、優しく可愛いらしい顔付きになってきました。

一番変わったのは、大きさでした。ご飯となる植物性プランクトンは豊富にあり、競争相手もそれほどいないので食べ放題です。

春に生まれ、冬を2-3回越すともうあの気の強いフナ君達より大きくなってしまいます。30cmを超える大きさになります。

お爺さんやお婆さんの長生きしている気の弱いフナ君達の中には40cmをはるかに超える大きなフナもいました。

こうして、いつのまにか他のフナと違う姿形になり、大きくなりました。

なぜ、「ゲンゴロウブナ」と呼ばれるようになったかについても諸説あります。源五郎という男が傷ついたフナを助けて、そのフナがキレイなお嫁さんになったとか、他のフナと違い、源五郎だけが捕まえる方法を知っていて献上鮒としたなど、いくつものお話しがあります。

実際に気の弱いヘラブナ

大量にヘラブナが放流されている管理釣り場でばかり釣りをしている方にはわかりませんが、ヘラブナはとても臆病で用心深い魚です。

それ故に、細い糸を使い、その細い糸で大きな魚を釣り上げるために他の釣りでは見られない軟調の竿が発達しました。

管理釣り場で水面を叩いて水しぶきが上がるようなアワセをカッコいいと思っている人もいると思いますが、それではいつまでも管理釣り場や釣り堀でしか釣れない釣り人になってしまいます。

魚の薄い野釣りでは、足音にも気をつけて、釣り座を作る際にもなるべく余計な音を立てないのが基本です。

ましてや、水面を叩くようなアワセなど魚を追い払っているようなものです。

湖などで、せっかくアタリが出てきたのに遠くから船外機のボートが入ってきたとたんにピタリとアタリが止まってしまった経験のある方も多いと思います。

ヘラブナという魚は、それほどにデリケートなのです。そして、本来はそこにヘラブナ釣りの面白さがあるのです。

相模湖の夜釣りで大型を狙うベテランが、夜釣りなのに午後3時か4時ごろには水竿での舟付けをするのは、水竿を水底に刺す時にどうしてもガツガツと音を立ててしまうので、少しでも早く釣り座を作りその影響を少なくしたいからです。

曇っていたときに盛んにアタリが出ていたのに、太陽が出たとたんにアタリが少なくなる事もあります。

これは、水中が明るくなりヘラブナのタナが下がった事が原因になってるケースが多いです。

山中湖の平野ワンドの深場で釣りをしていた時の事です。2時間ほどかかり、ようやくアタリが出て3枚目を釣った時に、そうですね、舟にして7-8艘分ぐらいは離れていた釣り人の水竿がいきなりスルスルと浮き上がり、バチャーンと大きな音を立てて倒れました。水竿の刺し方が甘かったんですね。

それで結局その日はピタリとアタリが無くなってオシマイ。野釣りではこんな事も起こるわけです。

どうでしょうか? 妄想なので、ハッキリした事はわかりませんが、こんな風にしてヘラブナは独特の性質を持つようになり、多くのへら釣り人を楽しませてくれるようになったのではないでしょうか。

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